いつの時代も、住まいの快適性における重要なポイントは「陽」と「風」です。

日本の伝統的な建築は太陽の光や風の流れをうまく利用した、いわば自然との共生を図る造りが特長です。

自然をうまく利用するにはどうしたらよいのか……これはなかなかの難問です。

現代に生きる、しかも初めて自分たちの家をつくろうとする方は思案に暮れてしまいますね。

例えば子どもに「風って何?」って聞かれても意外と説明が難しかったり……。

そこで今回は住まいと「風」についてお話ししましょう。

 

 

 

 

大きく分けて3種類の「風」があります

 

「風」を辞書で引いてみると、「空気が広い範囲を流れ動く現象」「人間に知覚される程度の速さを持った空気の流れ」などと書かれています。

子どもにもわかるように説明すると、要は「空気の流れ」。

その空気の流れは「小さい風」「中くらいの風」「大きな風」の大きく3つに分けられます。

 

①小さな風:ちょっとした温度差や気圧差が生み出す風。すきま風、換気扇やクーラーで生じる風、など。

②中くらいの風:私たちが通常「風」と呼ぶのはこの分類です。季節風(夏の南東風や冬の北西風)、海風陸風(昼は海から陸へ、夜は陸から海へ吹く風)、谷風山風(昼は谷から山へ、夜は山から谷へ吹く風)。

③大きな風:地球規模で吹く風。偏西風(地球の中緯度付近を西方向へ吹いている風)、貿易風(赤道付近を東方向へ吹いている風)。

 

住まいや建築物の設計に最も関わるのは②の「中くらいの風」ではあるのですが、この風はあくまで地図上で想定できるレベルでの話。

私たちの実際の生活レベルで考えると、風の流れはビルや家などの建築物、木々が変化させますので、地図上で想定する風の流れとは異なります。

そのため、私たち設計者はまずこの「中くらいの風」を意識しつつ、実際の「その場所特有の風の流れ」を掴みたいがために、「実際の計画地を見てからでないとご提案はできません」などとちょっぴり生意気なことを言うのです。

 

しかし、本当に計画地・敷地ごとに変わるのです。風は周囲の環境の影響を受けやすいデリケートな自然現象なのです。

 

 

 

 

昔からの知恵を現代技術でより身近に、快適なものへ変える

 

さて、大規模な都市開発などではスーパーコンピューターによる綿密な気流解析シミュレーションします。

あれだけの構造物が連立するとビル風が吹き荒れることになります。

新たに建てるビルの場所、形状いかんによって年中、台風状態になりかねないので、それを避けるために必要な作業のひとつです。

 

一般住宅では一大プロジェクト並みに大掛かりなことをする必要はありませんが、その代わり、住宅には住宅規模の風の計り方がきちんと用意されています。

 

近年では、スマートフォンに装着し、アプリと連動させて測定する風力計もあります。

昔は鳥の形をした風向機で、何度も風向きを計測・記録したものですが、「現代技術」を利用することで、陽や風など昔も今も変わらない「原理原則」をより有効に皆さんへお届けすることが可能となりました。

 

これも昔の知恵を今に活用する「温故知新」です。

カタチとして捉えられる大工技術などだけでなく、風など自然現象を取り込んだ設計技術や空間デザインにも「温故知新」はしっかり存在しています。

 

「温故知新の設計・デザイン」はこれからも大切にしていきたいものですね。