日本建築に学ぶ快適な住空間

 

 

温故知新とは過去の事実を研究し、そこから新しい知識・見解を導くこと。

ずっと変わらず昔から今に息づくものには確かな理由があるものです。それは住まいだって同じはず。今月は高温多湿な日本の夏も快適に過ごせる住まいづくりを伝統的な日本家屋から学んでみましょう。

 

 

 

陽射しを調節する住まいの工夫

 

 

日本には四季があります。

気温や湿度、日当たり、風向き……季節の移り変わりに合うように、伝統的な日本家屋は建て方や建材、外構などにさまざまな工夫を凝らしてきました。例えば、古き良き民家の南側の大きな窓の前にはよく落葉樹が植えられます。

 

これは夏には葉が生い茂るため強い日差しを遮り、冬には葉が落ちて暖かい陽を入れるという、落葉樹の特徴を生かして陽射しの調節をしているのです。

 

建物自体にも工夫がされます。南の深い軒も夏の強くて角度の急な日射は遮り、冬の緩やかな角度の陽は部屋の奥まで呼びこんで、明るさや温度の調節をはかるのです。

 

 

 

家の造りと自然現象を利用した空調の仕組み

 

 

日本家屋ならではの独特な空間である「縁側」。

 

住まいの内と外とをつなぐ曖昧な境界であるその空間には、コミュニケーションの場であったり、作業をする場であったりなどさまざまな用途で用いられる不思議な空間ですが、快適さを生み出すための役割も縁側には備わっています。

 

 

深い軒のその下には大抵、縁側が備えられますが、夏の夜にはその前の道に打ち水をし、地表面の温度を下げて冷やされた空気を入れる取り込み口の機能を縁側が果たすことになります。さらには、南に地窓(下の方にある窓)から風を入れ、反対側の天井付近にある窓から空気を抜けば、重力換気(空気は暖められると上昇する原理)を利用して、地表面で冷やされた空気が足元から入ってきて、家の中で暖められ、上昇しながら逆側の高い位置にある窓から換気とともに排熱することができます。

 

 

このような自然現象を利用した室内の空気の循環は、湿気に弱い木造住宅の弱点を補います。

 

その結果、湿気をコントロールされた木造建築はコンクリートよりも鉄骨よりも超長寿命となるのです。7世紀に創建された法隆寺は現存する世界最古の木造建築物として知られています。

 

 

 

先人たちの知恵が光る日本の家屋

 

 

温帯に位置し、しかも島国である日本の最大の気候特徴は「湿気」。

 

その湿気も、前述した家の造りのほかに、漆喰や土壁など古来より用いられている日本ならではの材料によっても室内の湿度を上手に調節(調湿)してきました。

古き良き日本の家には、現代のサーモグラフィやパッシブデザインという計算や理屈からではない、そもそもの生活の知恵(いかに快適に過ごすかという結果への本質的アプローチ)からの「本物のデザイン」が散りばめられています。

 

現代の家づくりにもぜひ取り入れてみたい工夫ばかりです。

 

建築を知れば知るほど先人の知恵には頭が下がりますね。